親の借金が発覚した場合

親(被相続人)が死亡するとその配偶者、子、兄弟姉妹、直系尊属(親の親)に対して相続が開始します。その際に親が借金をしている、債務を負っていることが発覚する場合があります。一定の期間(熟慮期間)が過ぎてそのまま相続しますと相続人に対して借金の取り立てが行われることになります。しかしながら、自分がしたわけでもない借金を負わせるというのは相続人にとっては不公平なことです。では、親の借金を負わないようにする制度はあるのでしょうか。また、その制度を使うための期間はどれぐらいなのでしょうか。

 

相続法では被相続人の借金も財産(消極財産)と捉えます。ですので、まずは相続財産を放棄することが考えられます。相続の放棄をしたい場合は家庭裁判所に行って申述する必要があります(民法938条)。これによって相続放棄をした人は相続人から除外されます(民法939条)。相続放棄は相続財産が明らかにマイナスである場合に有効な制度となります。
一方で、相続放棄をした場合には借金のみならず被相続人の車、土地などの価値のある財産(積極財産)も放棄しなければなりません。ですので例えば親に所縁があって手放したくない財産も放棄しなければなりません。このような場合には限定承認という制度が有効になってくる場合があります。限定承認とは、相続によって得た財産の限度のみに相続人が被相続人の借金(債務)を負う相続形態です(民法922条)。相続財産が明らかにマイナスである場合は上述の相続放棄をすればよいですが、プラスかマイナスか不明の場合にこの制度が効果を発揮します。相続放棄が相続人個人で申述できるのに対し、限定承認は共同相続人の全員がしなければなりません(民法923条)。ですので、相続人の1人でも限定承認に対して消極である場合には他の相続人は限定承認をすることができません。限定承認をするためには相続財産の目録を作成して、家庭裁判所に提出する必要があります(民法924条)。この場合に被相続人に対する債権者(相続債権者)及び受遺者の全員に対して限定承認をしたことを公告します(民法927条1項)。
以上の2つの制度を比較すると、相続放棄が相続人単独で比較的容易に手続きが行えるのに対し、限定承認は共同相続人全員の同意を必要とすること、財産目録を作成しなければならないことなど複雑な手続きが必要になります。しかしその分思い入れのある財産の承継のチャンスが出てきます。いずれの制度を使うかは個別具体的に判断するほかないでしょう。

 

上述の相続放棄・限定承認は相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月(熟慮期間)以内に行わなければ全ての相続財産を承継したこと(単純承認)になります(民法915条1項本文、921条2号)。そしていつ知ったことになるのか、についてですが判例は相続人が相続開始の原因である事実を知り、かつそのために自己が相続人になったことを覚知した時を指すとしています(最高裁昭和59年4月27日判決)。これを開始の時点として3ヶ月の間に親の財産を調査し、どの相続形態を選ぶか決めることになります。

 

伊東光司法書士事務所は横浜市、川崎市、八王子市、橋本市(横浜線)近郊で債務整理はもちろん、相続、不動産トラブルのご相談も受け付けております。何か借金を抱えていてトラブルがあるなどありましたら、お気軽にご相談いただければと思います。初回の相談は無料となっております。

当事務所が提供する基礎知識

よく検索されるキーワード

司法書士紹介

伊東司法書士
司法書士

伊東 光

(いとう ひかり)

東日本大震災の際に復興庁の職員として岩手県釜石市役所に4年間勤務し、
現地の復興支援に従事いたしました。

軽いフットワークで困っている方の元に駆けつけるなど、とことん親切・丁寧にサポート。

お客様と同じ目線で同じ立場に立って考えることを大切に、日々の業務に取り組んでいます。

  • 所属団体

    ◆所属団体

    神奈川県司法書士会(第2356号)

    簡裁訴訟代理等関係業務認定会員(第1101010号)

    神奈川県司法書士協同組合員

    一般社団法人神奈川県公共嘱託登記司法書士協会会員

    公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート神奈川県支部会員

    法テラス神奈川契約司法書士

    東京青年司法書士協議会会員

    神奈川青年司法書士協議会会員


    ◆執筆

    「市民と法」民事法研究会(2014年12月No.90)

    「月刊登記情報」きんざい(2016年3月652号)

  • 所属

    神奈川県立鶴見高等学校卒業

    山形大学工学部卒業

    宅地建物取引主任者試験合格

    司法書士試験合格

    簡裁訴訟代理等関係業務認定試験合格

    司法書士事務所を開業


    司法書士資格取得当時は、借金問題が大きな社会問題となっており、困っている方を助けたいという一心で債務整理を数多く取り扱う大手司法書士事務所に勤務し、様々な経験を積む。


    東日本大震災後は復興支援にも従事。岩手県釜石市に移住し、市の職員として4年間勤める。主に複雑な登記や相続を取り扱い、震災後三陸沿岸地域で初となる用地買収のスキームを確立。


    現在は地元横浜に戻り、伊東光司法書士事務所を開業。地域の皆様のお悩みに応え続けている。

事務所概要

事務所名 伊東光司法書士事務所
所属 神奈川県司法書士会
司法書士 伊東 光(いとう ひかり)
所在地 〒222-0036 神奈川県横浜市港北区小机町1223-3 参番館108号室
電話番号 045-534-3331
対応時間 平日 9:00~18:00(事前予約で時間外対応可能)
定休日 土・日・祝(事前予約で土・日・祝日も対応可能)
アクセス JR横浜線 小机駅 徒歩15分
横浜市営バス 長導寺前 徒歩8分
泉谷寺前 徒歩10分
駐車場あり(ご予約ください) ※コインパーキングなどもございます。